きみの腕の中で


「誰だお前?」

「テツだよテツ!!初対面じゃねえよ!!」

「だから知らねえよ」


声をかけた“アカリ”の仲間のテツと名乗る男にそれだけ言うと、それ以上構うことなくまっすぐこっちの方へとゆっくり歩いてくる。

コンビニ前からは、そんなテツに対してギャハハと笑う声が飛ぶ。
笑われているテツは「笑うんじゃねえよ」と大声を出しながら、やっぱり笑っている。


“ミツキ”の言い草からして、今私の目の前にいる二つのグループは『仲間』という枠ではないようで…


それでも、“ミツキ”の後ろから続いてくる人たちの何人かはテツと、コンビニ前から依然動くことのない男たちと話をしているので顔みしりであるということは理解ができた。



「しょうがねえよテツ。満月はユウメイジンだからな。人の顔覚えてらんねんだよきっと」


テツを励ます声によって、“ミツキ”がこの地で特別な人なんだということも知る。

まあ、彼の雰囲気を感じちゃえば不思議と“やっぱりそうなんだ”納得できてしまう。


そうこういろいろなことを把握しているうちに、
“ミツキ”が目の前で足を止めていることに気付いた。


そして彼に視線を戻した瞬間、私は息をするということを…忘れた。







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