きみの腕の中で
今になって、きちんと彼を見れたんだと知る。
こんな人間がいるのか…とさえ疑った。
言葉なんかじゃ表現できないくらい、綺麗に整った容姿は、性別を通り越して思わず自分と比較し、勝手だけどとても私を惨めに思わせてくれた。
そんな彼の切れ長な、幅の広めの奥二重が私を捉え、
思わず触ってしまいたくなるような薄くて形のいい唇を開いた。
「正当防衛ねえ」
日中は外に出てないんでしょ。と言ってしまいそうになるくらい白い腕を伸ばし、右手で予想外にも私の、“アカリ”に殴らせた頬に触れた。
一瞬…ほんの一瞬だけふっと口角を上げて。
そんな彼の言動に、
「さ…最初から見てたの…?」
と声を震わせたのは私ではなく、仲間の隙間からこちらに顔を傾ける“アカリ”だった。