きみの腕の中で
てっきり、“アカリ”の質問は無視されたもんだと思って一瞬だけ、何が“ああ”なのか理解できなくてキョトンとしたのは私だけだったらしく、
周囲の反応を見るからにして、これが…彼の異常なまでのマイペースさが
彼と彼に関わる人にとってはあたり前なんだと思われる。
「全然…気付かなかった」
「おめえらみてえに騒いだりしねえからな」
「……なんで…止めに入ったの…」
「最初から見てたからだってのがわかんねえ?」
「……」
「わからない」とでも言いたげな目で“ミツキ”を見つめる“アカリ”に
チッと舌打ちが聞こえる。
舌打ちの主は“ミツキ”だった。
「低能が」
舌打ちに続いて、冷ややかな言葉までもが彼の口から発せられる。
「勝手に喧嘩ふっかけて勝手に負けて他の奴らが加勢するだあ?くだらねんだよてめえらはよ。それとも何だ?この女が先になにかしたのかよ?」
彼の問いかけに、誰ひとりとして答えることのない“アカリ”達に再び舌打ちをするとコンビニのほうに体ごと向けた。
こっちの会話に興味があるらしく、コンビニ前グループも静まり返ってこっちを見ていた。
「この低能がこの女に絡み行った理由はなんだ?」
低い声が響く。