きみの腕の中で
至近距離で投げかけられた言葉。
おそらく彼にも聞こえているはず。
聞こえていないわけがない。
それにも関らず、彼は私に触れていた右手をおろして
おもむろにジーパンのポケットに手を当てて何かを探しだした。
あげく、見つからなかったらしく、後ろに顔を少しだけ向けて「煙草」とだけ言う。
それにすぐ反応した、捻れば折れてしまいそうな細身の彼とは対照的な、筋肉でガタイの良い、ソフトモヒカンをしたいかつい顔の男が呆れたように笑いながら
赤いパッケージの箱をジッポと共に彼に差し出す。
「ほらよ。お前さっきリュウからもらった新箱どこやったよ?」
「あ?ポケットん中から消えた」
その箱から一本だけ取り出してくわえると、ジッポですぐさま火をつけて箱と一緒にソフトモヒカンの男に返した。
それからようやく…
「ああ」
と、“アカリ”に視線を向ける。