きみの腕の中で
「…このへんが県内で一番危険地域だって知らねえのオネーサン?」
「知らない。私県外住みだもん」
「だろうな」
そうじゃなきゃ女一人で夜は歩かねえよ、と無邪気にケラケラ笑う彼を見ながら気づいた。
今の私は……なぜか歪んでいないと。
「べつに一人でも平気…」
いつもどこかで抱いてた苛つきが…今は微塵も感じないと。
「確か闘(や)り合うのは慣れてそうだったな」
「そうよ。以外と負け知らずなんだから」
いつもならもっと紅いはずの右手の甲が…
「んでも女が無駄に傷を負うもんじゃねえよ?正当防衛だとしてもな」
「……」
頬の傷が…
「なあ、大人しく今日は俺に送られてみねえ?」
気づけば、素直に頷いてて
彼は満足そうに頬を緩ませてた。