傷の行方
お客さんの顔を見ること



大きな声をだして



雰囲気を壊さないこと



それが決まりだった



掃除や部屋に文句をいう人もいたけれど



奥さんはいつも 従業員を守ってくれた



そこで教わったことは



どんな愛で どんな事情で



そのカップルが来ているか



わからない



どんな愛でも そのカップルにとって



ここでは大事な3時間



お金をだしても欲しい



2人きりの空間だから



大事に大切に過ごしてもらいましょう


ということだった



「不倫なんて家庭を壊して


平気でいる人達じゃんか…」


と私は思っていたけれど


ここへ来る不倫している人達は


こそこそと人の目を気にしながら


ここでしか ゆっくり2人きりになって


話せないのだと知ったら



とても可哀想に思えたりした



私には不思議な感覚だった
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