envyⅠ


「そう。じゃあいこっか。サキちゃん」
太郎さんは満足そうに目を細め、私に手をさし出した。

「えー、留美も連れてってくださいよー。ていうか、せっかくだし皆で遊びましょうよ」


「んー、でも僕皆とは今日が初めてだし。留美ちゃんとはもっとお話したいけど、そしたら男の子ばっかり残って可哀想でしょ」

名残惜しそうにごめんね、僕内気だから、なんて言ってるけど店員でもない初対面の人に商品の場所を平気で聞けるような人は絶対に内気じゃないと思う。


差し出された手を取るべきかどうか悩んでいる私の手をぱっと握って、
じゃあ、またねー。
とみんなに向かって手を振りながら、太郎さんは一緒にいた女の人の方にずんずん進んでいく。

私と手を繋いだまま。

ふと後ろを振り向くと


無表情で手に持った林檎飴を見てる優さん
断られて少し拗ねてるらしい留美
そんな留美と太郎さんを交互に見ながら、舌打ちしている信吾さん
私と太郎さんを気にもとめず、ニコニコと隣のゆいとくんを見る爽馬さん
唯一、ゆいとくんだけが後で会いましょーね!
と可愛い笑顔で手を振ってくれた。




行っていいって言った優さんがそんなだから、これは私を試してるんだろうか。この前のことを踏まえての今回だから、私は試されてるんだろうか、なんて思った。


まだ日の浅い私を信用してる、ってわけじゃないだろうし…。
逃げても捕まえれる自信があるから?
留美さえいれば、十分役割をはたせると思ってるから?
そんな考えが脳裏に浮かぶ。
私には優さんの考えてることがわからない。









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