桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「……水無月さん、今好きな人がいる?」
私に背を向けカズ兄の方を見ながら、
静かに問いかける、
瑛李香さんの声。
一瞬、
その問いに戸惑う。
ドクン、と鼓動が唸った。
けど、
すぐに答えは決った。
瑛李香さんに嘘はつけない。
カズ兄にも、嘘はつけない。
自分にも、
青磁先生にもーー
「はい、大事な人がいます。大好きな、人がいます」
そう、
真っすぐに瑛李香さんの背に答えると、
振り返った瑛李香さんは
「先、越されちゃったな」
そう言って、
微笑んだ。
今まで見た瑛李香さんの表情の中で、
一番、
穏やかで、優しい微笑みだった。