冬の日の犬のお話
老犬は診察台の上に横たわっていた。
傍らには品の良い初老の婦人。
獣医の奥さんだった。


奥さんは、濡らしたタオルで老犬の口の中を拭ってやっていた。
迷惑に巻き込んでいたのは、獣医ひとりではなかったのだ。


ぺこりと会釈する真樹子に、奥さんはにこやかな笑みを返してくれた。


ごめんなさいね。
今、お風呂なの。
もう来ると思うわ。

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