冬の日の犬のお話
獣医は、真樹子の腹立ちなぞ意に介さない様子で、台にのせた犬をあちこち触っていた。


『…車じゃないな。
こっち来てみろよ。』


再び振り返った獣医の声から、意地の悪い口調が消えていた。


『ひどいもんだ…』


ぽかんとしている真樹子に、獣医は首を横に振ってみせた。


『悪い飼い主のサンプルみたいなもんだ。』


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