雨音色
ふと、今まで聞こえていた音とは違うそれがした。


雨の音ではない。


その音は、何かと似ていて、非なるもの。


耳を済ませてみた。


聞こえる。


確かに聞こえる。


雨音に混じる、その音が。


暗闇に慣れ始めた瞳が、その正体を伝えた。


その瞬間、


全てが、止まった。


雨の音も、時間の流れさえも。


そして、また動き出す。


時が、暗闇に浮かぶ、その確かな存在に、


命を与えたかのように。


気まぐれな雨が、


大きな音で、その場を包み込んでいた。
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