雨音色

「・・・」


眉間にしわを寄せて、目を閉じている牧に、おずおずと藤木が声をかけた。


「・・・あの、先生・・・?」


すると突然、目を覚ましたかのように、目を開け、


独り言をつぶやくように、牧は言った。


「血は争えないんだな」


ちら、と牧は藤木の隣に座る母の顔を見た。


いたずらっぽく笑う瞳。


大きなため息を、つかずにはいられなかった。


「・・・とりあえず、今夜は遅い。・・・明日、また来る」


そう言いはなって、牧は立ち上がった。


「先生、遅いのでお泊りになっては?」


母が、急いで牧を止めたが。


「いや・・・。結構。今日は帰ります。車は外に待たせてありますので」


被っていた帽子を持って、牧は早足で玄関へと向かう。


2人は急いで後を追った。


< 112 / 183 >

この作品をシェア

pagetop