雨音色
綺麗に舗装された道の両脇には、


無数の、綺麗に整えられた花々が植えられている。


もっとも、色とりどりの花ですらも、藤木の緊張を緩和することはできなかった。


徐々に近づいてくる、お屋敷。


塀からも垣間見れたが、それを目の前にるすると、


如何にそれが大きいのか、


そして、山内家の日本における存在意義の大きさが、身に染みてくる。


「・・・壮介さん」


隣で、不安げな顔をして、幸花が藤木の顔を見上げていた。


「・・・私、・・・」


彼女が何かを言いかける。


彼は、その瞳に映る自分の顔を見た。


・・・あまりにも、頼りなさそうで、不安げな表情を浮かべている。


彼は急いで、いつものように、穏やかな笑顔を浮かべた。


「・・・心配しなくて大丈夫です。僕らなら、大丈夫です」


どれだけ、その言葉に力があるのだろう。


彼女を安心させてあげられるのだろう。


彼には、それが分からなかった。


しかし。


「・・・そう、ですよね。私たちは、大丈夫ですよね」


にっこりと、明るい笑顔を、幸花が浮かべた。


彼は、目を細め、その笑顔を見る。


明るく輝く太陽が、そこにあった。


「眩しい、です」


「え?」


「・・・いえ、何でもありません」


彼は言葉を濁すと、前に視線を遣った。


屋敷まで、もうほんの数メートルという所に差し掛かっていた。


その時。











ばたん!



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