雨音色
静かな車内の中から外を見ていると、


次第にその風景は、田舎のそれから都会のものへと変わっていく。


そして、それと同時に、藤木の心臓もその鼓動のスピードを上げていた。


どれくらいの距離を走ったのだろうか、


気がつけば、覚えのある風景に変わっていた。


昨日、学会終了後、


あてもなくさまよった道に、車が走る。


ごくり、と藤木の喉が鳴った。


・・・運命の時が近付いている、彼は、そう考えていた。


正面の窓に、徐に現れる、荘厳な門。


門前には、門番と思しき男が一人立っている。


車がその前で止まると、男が近づいてきた。


「何用か」


牧はドアを開け、外に出る。


ばたん、とドアがしまる音がした。


藤木の手には、無数の汗の粒が浮かんでいた。


壊れかけた眼鏡がずり落ちてきた。


なおそうとするが、何の理由も無く、彼はそれを躊躇った。


今まで感じたことのない緊張感が、彼の胸を締め付ける。


今にも暴れだしそうな心臓を、少しでも安定させるために、


彼は大きく息を吸い込み、吐く、これを繰り返した。


彼らは何かを話しているようだったが、


数十秒も経たないうちに、牧は戻ってきた。


「・・・前に進めてくれ」


その言葉に、ほぅ、と藤木が、長く細い息を吐いた。


すう、と門が開かれる。


ゆっくりと、自動車が前進を始めた。














――――ここからだ―――――




そう一言、藤木は心の中で呟いた。
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