雨音色
「こら、そんな顔をするのでない」


「はい・・・」


明らかに不機嫌そうな表情の幸花を、英雄が嗜める。


「いいか、粗相のないようになさい」


「・・・はい」


幸花は膝の上の両手を固く握り締めた。


「失礼します。山内様。藤木様ご一行がお見えでございます」


そこはレストランの傍にある個室だった。


給仕の者が、ドアの向こうから彼らの到着を告げる。


「ありがとう。お通しして」


「承知いたしました」


しばらくして、ドアをノックする音が聞こえた。


「幸花、立ちなさい。くれぐれも無礼のないように」


英雄は、聞こえないぐらいの小さな声で彼がつぶやくと、ドアの方に向かい、扉を開けた。
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