雨音色
「・・・それは?」
彼がけげんそうに、その紙を見つめる。
手より少し大きいぐらいのその紙を、彼女は大切そうに彼に差し出した。
「・・・独逸からでございます」
その一言に、彼は目を見張った。
「本当か?」
彼は手を出し、恐る恐るその紙を取った。
まっ白なそれをひっくり返すと、
流れるような字体で、外国の文字が連ねられていた。
「・・・恐らく、旦那様宛でございます」
彼は急いで封を破り、中身を取り出した。
数枚の、折りたたまれていたそれを急いで開く。
「・・・」
彼は、何も言わない。
しかし、タマは気が付いていた。
その頬が、緩んでいることに。
「・・・旦那様」
タマの声は、とても穏やかだった。
「独逸は、・・・日本と同じ、美しい秋の季節なのですね」
彼女には、見えていた。
最後に重ねられた手紙の裏から、美しい秋の景色のスケッチが、
そこに描かれていることを。
彼は何も言わない。
ただ、緩めた頬を上気させ、ただ、2,3度、頷くだけだった。