雨音色


そして、それは牧教授という、敬愛する師をもてたことと同じくらい、


価値があるものだと思います。


だから、僕は幸せ者なのです。


今から、先生と直接お会いできる日が来ることが待ち遠しくて仕方ありません。


これから朝夕冷えてまいりますので、体にはくれぐれもお気をつけください。


敬具


追伸


母の世話、くれぐれもよろしくお願い申し上げます」










「・・・ふっ」


牧の顔は、ほころんでいた。


彼はそれを丁寧に元通りに畳んで封筒に入れ直し、


そして自分の着ていたシャツの胸ポケットに差し込む。


「今日は、遠方にいる壮介の為に、少し奮発しようかね」


「あら、それでは外食いたしますか?」


「そうだね。3人でエリーゼにでも行こうか」


少しでも、独逸の雰囲気を味わうために。


彼は何度も髭をなぞりながら、自分の書斎へと戻った。
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