雨音色
再びその背をぽん、と軽やかに叩く。


「いや、実は彼女、かなり難しい性格だと他の見合いした助教授が言っていたが、

君はどうも好かれたみたいだ」


ははは、と明るい笑い声が研究室に響き渡る。


「・・・ちょっと待ってください。僕はまだ・・・」


藤木が口を尖らせる。


「良いじゃないか、女性とは付き合ったこと無いのだろう。

女と遊ぶこともしないで勉強ばかりしていては、つまらん人生になってしまう。

女と酒は人生の必需品なんて言葉もあるくらいだ」


「・・・」


適当な反論ができず、ただ黙っているしかなかった。


牧の言う事は図星だった。


勉学に明け暮れた学生生活、女性との交流は実の母と嫁いだ姉ぐらいであった。


「お前も彼女は嫌いではあるまい。

君はああいうお嬢さん、元気で芯の強そうな女性が好きなのだろう。

私は無論お断りだがな。

気軽にお茶でも飲んで街を歩けば良い。

嫌なら断れば済む話だ」


「何故元気で芯が強いとお分かりなのですか?」


妙なことを聞く、といわんばかりの表情で牧が答える。


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