雨音色
「・・・すみません・・・。遅れてしまって・・・」


門の前には、一台の車に白い洋服姿の女性と和服の女性が立っていた。


和服の女性が彼を凝視する。


講堂の壁に掲げられた時計は、


待ち合わせ時間である11時から既に30分を過ぎた所を指していた。


「いいえ。今来た所ですよ」


幸花がにっこり笑った。


「本当に申し訳ありません。色々ありまして、つい・・・」


息を切らしながら、彼が深々と頭を下げた。


彼女の隣に立っている、中年の女性があからさまに機嫌を損ねているのが分かる。


「・・・お嬢様を待たせるなんて。車でお越しになれば宜しいものを。

それに、そのような・・・」


「タマ、申し付けた時間になったらここに迎えにきてちょうだい」


幸花がタマの言葉を遮る。


「・・・かしこまりました」


そう彼女は言うと、しぶしぶ車の中に戻っていき、その場を走り去った。


彼らの姿が消え去ると同時に、彼女は彼を見ながら言った。


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