雨音色
真実
「お嬢様」


扉を叩く音と同時に、タマが部屋に入ってきた。


「何?タマ」


幸花は鼻歌を歌いながら、鏡台の前で髪を梳かしていた。


その姿を目にして、心の奥が少し苦しくなるのを、


タマは感じていた。


しかし、これは山内英雄の命令である。


「お父様がお呼びでございます。居間に来るようにと仰せつかっております」


「居間に?いかがされたのかしら」


彼女は櫛を置いて、立ち上がった。


「ありがとう。今行くわ」


上機嫌な彼女はタマに微笑んで、居間へと向かった。


タマは何も言わず、その後ろを付いて行った。








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