雨音色
「藤木君、君、本当に素晴らしかったよ!」


「野村先生、ありがとうございます」


学会の終了と同時に、藤木が座っているところに、背の低い男が近づいて小走りで向かって来た。


そして、藤木の手を握り、上下に激しく揺らす。


「いや、お世辞ではない。

私は感動して鳥肌が立ったくらいだ。いつもふんぞり返っている学者たちも皆総立ちだった。

牧先生、貴方は本当に優秀な弟子をお持ちになられた」


隣で得意そうに笑う牧が、大きな口ひげを何度も何度も触る。


その日は帝国大の講堂を会場とした、学会が開かれていた。


「いえいえ。滅相もございません。

まだまだ彼は若いですし、研究も未熟でございます」


「何をおっしゃる。これは早速政府の方に藤木君を留学候補者に推薦しなければ」


夏の暑さも峠を過ぎた頃だった。


その日の藤木の論文の発表は、学会でも高い評価を得ることができ、


たくさんの学者からの支持を得る事が出来た。

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