雨音色
どれくらいの距離を歩いたのだろう。


そろそろ体に疲れを感じ始めていた頃。


ある所の道の角を曲がると、そこには洋風の大きな屋敷が建っていた。


彼はそこでようやく、その歩みを止めた。


しばし、その場に立ち尽くす。


何が彼をそうさせたのかは、分からない。


彼は何もすることなく、雨に打たれながら、しばらくその屋敷を見つめていた。


いつの日にか見た欧州の風景が、


目の前に再現されている。


よほどの財力の持ち主だろう、


そんな取り止めの無い事を、藤木は思った。


そして、彼は再び、その歩みを続けようとした。


その時だった。


ぎぃ、という音と共に、門の所で人の気配がした。


その人はその場に立ち止まり、


傘もささずに歩くずぶ濡れの彼を見ているようだった。


初めは気にせずに歩いていた彼も、


その視線の強さに、振り向かずにいられなかった。



「・・・貴方は・・・」


二人は見つめ合ったまま、しばらく黙ったままだった。
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