雨音色
ぽつ、と何かが顔に当たる。


ぽつ、ぽつ、とそれは次第に数を増やしていく。


そして、


しまいにはそれが集団の形になって、地上のすべてにぶつかっていた。


牧が言った通り、


何時の間にか空は、その姿を漆黒の闇に包まれ、大粒の雨を降り落としていた。


前髪から滴る雨粒が、眼鏡に映る光景を曇らせる。


しかし、それは彼を止めるほどには十分の力を持ち合わせていないようだった。


彼の耳には、雨が道を打ちつける音しか聞こえない。


彼は歩みを止めなかった。


ただ、歩き続けた。


見慣れない景色が続いても。


雨が、体に染み込んで行く。


着ている服にも、同様に。


砂漠の土地に、水が染み入るかのように。


心地よい冷たさと体に感じる重みが、


彼の歩みを助けていた。
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