雨音色
「・・・お嬢様は、貴方と別れて清々した、そうおっしゃっていらっしゃいます」


響く。


冷たく、激しく。


雨の音が。


耳の奥に。


心の奥底に。


深く、更に深く。


「そうですか。それを聞けて安心しました。

申し訳なかった、そう一言、お嬢様に伝えてくださると幸いです」


そう言うと同時に、彼は歩き始めた。


後ろを振り向くことも無く、来た道を真っ直ぐに。


彼女はしばらくその場で、濡れた彼の背を見つめていた。


雨音だけが、激しくその場に響き渡っていた。
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