雨音色
頭上に輝く満月が、柔らかく彼らを照らす。


「違う身分同士の結婚は、祝福されません。


下からは妬まれ、上からは恨まれます。


貴方様も学者様であれば、このような事はお分かりでしょう」


タマは吸えるだけの息を胸に取り込んだ。


「わざわざその事をお伝えに・・・?」


「いえ、それだけではございません」


彼女は少し俯いた。


「私は先程、貴方様に嘘を付きました。


お嬢様は元気であると。


しかし、実はお嬢様は貴方様に会えなくなってからというもの、


毎日泣いて暮らしております。


あんなに悲しまれるお姿は、


お母様がお亡くなりになって以来でございます」


タマが悲しそうな顔をした。


「タマは耐えられません。


あんなお姿を見続けるのは。


そこで恥を承知で、


貴方様に頼みたいことがございます」


「何でしょう」


彼が優しく微笑んだ。


これ以上無い程に。


少しの躊躇いの後、静かに彼女が呟く。


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