雨音色
少しして、彼女が静かに話し始める。


「・・・私のせいでございます」


「はい?」


唐突な彼女の言葉が、その場を浮遊する。


「私が旦那様に申し上げました。貴方様が庶民であることを」


鈴虫の歌声が、静けさの中で、そのか細さを響かせていく。


「ある日偶然、私は貴方様が庶民であることを知ってしまいました。


私はとても悩みました。


この事を、旦那様に伝えるべきかどうか。


そこで、こう考えたのでございます。


お嬢様は今まで苦労などしたことはございません。


世間知らずのお嬢様がこのまま貴方様に嫁ぐことになれば、


必ずやお嬢様も、貴方様も苦しませる事になる、と」


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