一匹狼と無邪気なワンコ

 救急車を呼んで運んでも、やはり母親は手遅れだった。


 短期間の間に三人の家族を失った俺らに対し――正確には俺に対して、だが――世間の目は冷たかった。


 ただ、千佳の家族は変わらず接してくれていた。


 そしてそのころから俺は心を閉ざした。


 誰に対しても笑わず、攻撃的で、他人を近寄らせなかった。


 そんな俺に親父は言った。

 
「嘘でもいいから笑っとけ。お前の為に」

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