我、ホームレス!
「おめえ、一人か?」

「うん」

 子供は屈託も無く言った。

 俺は子供に話しかけた。孤独だったホームレス生活にちょっとした味が付いた気がする。

「ふーん……。じゃあ、生まれは北の方なんだな」

「うん! それからずっーと風に乗ってきたんだけど、迷子になっちゃって……」

「風もきまぐれた奴だからな。まあ、このまま風に乗り遅れたらここに住んじまうのも悪くないぜ」

 こう年を取ると、自然と寂しさがこみ上げてくるものだ。

「おじさんとだったらいいかも」

 子供は、またも笑顔で答える。まだ何も知らない、そんな表情であった。

「だがな、ここは屋根の下でもないし、路地裏でもねえ。栄養には困らねえかもしれねえが、雨や風からには逃れられねえぜ。それでもいいのか?」

 俺は再度子供に聞いた。愛着がわいてからは遅い。厳しい場所に住むならそれなりの覚悟をしとけ、との警告でもあった。

「大丈夫だよ!」

 子供は即座に返答した。

 こうして、俺のホームレス生活に住人が増えた。子供はすくすくと成長して立派になっていった。金髪のイケメン。若い女の子がはしゃぎそうな、そんな風貌である。しっかりとした体に俺は自分の息子のようだと感じていた。

 一方で俺はよぼよぼの爺さんになっていく。頭は白髪になり、金髪はもうどこにもない。

 そして、俺は終焉の時を迎えていた――


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