幸せという病気
さかのぼる事、ほんの数分前・・・。
午後十時十二分。
武達の父親もまた、その時昏睡状態に陥っていた。
「・・・そうですか・・・」
「伊崎さん・・・息子さんの傍に・・・いてやってあげられませんか・・・?」
それを聞くと、祖母の目にドッと涙が溢れ出る。
泣きたいわけじゃない・・・。
息子と過ごした全ての映像が、幸せの証として涙で蘇る。
そして祖母は、手で目を覆いながら、震えた声で電話の向こうへと頭を下げた。
「息子を・・・宜しくお願いします・・・」
その言葉で祖母が電話を切ると、すみれは祖母に伺う。
「・・・おばあちゃん?」
「ごめんねすみれさん・・・今、武達のお父さんもね・・・危篤なんだって・・・」
「え・・・」
「何をしたってどこにいたって・・・私にとってはいつまでも息子・・・だからせめてね・・・」
「・・・せめて?」
「せめてもう一度・・・抱き締めてあげたかった・・・」
それを聞くとすみれは祖母に訴える。
「まだ遅くない!!」
「すみれさん・・・」
「・・・まだ生きてるから!!お父さんの所行くよ!?」
「でも武と遥がこんな時に・・・」
「大丈夫!!絶対にあの二人は死なない・・・」
すみれの言葉で、竜司はすぐにタクシーを呼んだ。
戸惑う祖母にすみれが続ける。