あたし、脱ぎます!《完》



「桐谷先輩とは

うまく行ってるのか?」



並んで歩く雄介が

チラッとあたしを見ると、
尋ねてきた。



「うん。うまく行ってる。

遠距離だけど
月に3回は会ってるし」



「3回も?!
お前が会いに行ってるの?」



「……う、うん。
そ、そうだね。

あたしが行ってる」



正確に言うと、
仕事で行った時に、
淳平くんに会っているのだ。



交通費は
事務所が出しているから

あたしの負担は一切ない。


高校生のあたしが
月に何回も

東京なんて行けるわけないもん。



あの初キス以来、

あたしは
淳平くんのことが

もっと大好きになっていた。


会うたびに
ギュッと抱き締めてくれる腕も、

厚みのある手の平も、

ニカッと笑う笑顔も、

弾力のある唇も

全部がもっともっと好きになった。



『恋の虜』って言葉があるけど、

あたしはまさに
淳平くんの虜になっている。



淳平くんに
会えることが

仕事へ励みにもなっていた。



東京に行くたびに、

雑誌の撮影が2本あり、

打ち合わせやオーディション、

そして夏休みには
DVDの撮影で

沖縄に行くことも決まっていた。



すべてが
順調に行っている

あたしだけど……。



のんきにしていられないこともあった。。。






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