あたし、脱ぎます!《完》



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「萌香!萌香!」



夏休み初日。


東京に行く
準備をしていると、

階段下で
お母さんの声が聞こえた。


ドアを開け、
「何?」と叫ぶと、

「ちょっと下りてきて」と

ご機嫌な声が返って来る。


あたしは
「何?」と

面倒臭そうに
階段を下りて行くと、

玄関には
雄介が気まずそうに立っていた。



「……あ、雄介」



「……よっ」



雄介も
ばつの悪い顔で、

あたしのことを見ていた。



「今ね、
花壇で水やりしていたら、

雄ちゃんが居たから
寄ってもらったの。

ほら、
あんたのドラマの練習相手になってもらったらいいんじゃない?」



え?


マジ?


余計なこと考えるお母さんなんだから!!



「ほら、
雄ちゃん上がって♪

萌香に付き合ってあげて。

おばさんやおじさんじゃ務まらないの。

お婆ちゃんだけは
女優気取りなのよ」



雄介は
強引に誘導するお母さんに

「あ、はぁ」と
答えると、

靴を脱ぎ、
リビングに向かった。


途中、
こちらにチラッと
目を向けたが、

すぐに逸らして
ソファに腰を下ろした。

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