フィルムの中の桜と私

別れた道

あれから一年が経とうとしている。美由は調理学校で毎日勉強の傍ら、バイトもして、本気で料理について学んでいる。
早紀は子供ができたらしい。近々結婚すると連絡が最近あった。
俊也とは月に一度ほど、電話している。とりとめの無い会話だが、俊也と美由を繋いでいる唯一の手段だった。俊也は上京してすぐ、写真家の人に弟子入りし、助手として色々学んでいるようだ。
春になり桜が咲いた4月。俊也から電話だった。「美由、俺明日そっち帰るよ!」
「へ?急に?」
「まぁ前から決まってて、急に帰ってビックリさせようと思ったんだけど我慢できなくて」
「なによそれ。ふざけないでよね!」
口では文句を言ってるが、内心嬉しくて仕方ない。興奮を抑えきれないのだ。
「美由、明日開いてる?」
「開いてるもなにも無理矢理開けるよ! 何時頃になるの?」
「そっちには昼の一時くらいには着くと思うよ!

「分かった。その時間らへんで公園の桜の木の下で待ち合わせしよっか!?」
「いいね!そうしよう!今ちょうど満開だよな?ちゃんと開花時期を狙って帰るんだぜ」
「そうなんだ、とにかくちゃんと来てよね!」
「当たり前だ!新しい写真撮ろうな!」
電話が切れても美由はスキップしたくなるほど嬉しさがこみ上げていた。その夜は明日の服装、メイクなど考えてたら夜も眠れなかった。
明日、大好きな人に会える…。
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