last~舞い散る雪の羽根~
「おはようございます、せんぱい」


「ああ」


入ってきたのは、地元で可愛いと評されている雪ヶ丘高校の制服に身を包んだひとりの少女。


長い黒髪に、150センチくらいのちんちくりんな体型が少しアンバランスな印象を抱かせる。


「あー、またハンバーガーなんかを食べてる。栄養が偏りますよ」


当然のように上がりこんでくる。


「おとといの夜から昨日の昼にかけてはちゃんとしたものを食べたよ」


「毎日ちゃんとしたものを食べなきゃだめですよっ」


朝からうるせーな、こいつは・・・。


コイツは森山 若葉(もりやま わかば)。


おれの隣に住む、雪ヶ丘高校の後輩だ。


おれと同じく、地方から来て一人暮らしをしている。


コイツはおれによくなついている。


まあ、コイツに一人暮らしのイロハを教えたのは、他でもないおれだからな。


それを恩義に感じているのか、頼んでもいないのに時折こうしておれの世話を焼きに来る。


おれ自身も、たまに世話を焼いてやっているし、持ちつ持たれつの関係だ。


おれは匠とは違って女子には一歩引いた生活をしているが、若葉ともう一人だけは話が別だ。


友達以上家族以下。


それが、おれたちの関係を簡単に表してくれる言葉だと思う。


だって、恋人には絶対にならないから。


『あの日』を境に、そうだとわかったから。


だから、安心して付き合える。




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