【短編】ねぇ…私を見て?
ルーくんが一歩ずつ近づくから

一歩ずつ後退する。


「逃げるな!!!」


腕を掴む力の強さと

地響きがするんじゃないかってぐらい

冷たい声に動けなくなった。



もう…ルーくんを解放するから


だから…もう許してください…。



近づいたルーくんに

声とは裏腹に優しく抱きしめられた。




なんで?


どうして…?




あぁ…最後だから…。



辛い…辛いよ…。


流したままの涙はより一層溢れ出す。



「やっと本音聞かせてくれた…」



こつんっと額を私の額に合わせる。



「ずっと待ってた」




『…何を?』



そのまま、私の肩にルーくんが顔をのせる。



「優歌って呼べる日を…」



『最後だから?


…意味わかんないよ』



そんなに一緒に居たくなかったの?




「ちげぇし…


最初、告られた時

年上に…彼氏って存在に…優歌は憧れてるだけだって思ってた」




『ちがっ…』



「あれ以来、優歌は一度も俺を好きだって言わなかったし

我儘言わねぇし…挙句、男と2人で帰って来るし…

あぁやっぱ錯覚してたんだろうなって

それなら、距離を置いて離れてやんなきゃって…」




『何…言ってんの?』



「でも、無理だった。


初めて会ったあの瞬間から、優歌に一目惚れしてた。


一目惚れなんて信じてなかったし…まさか中学生に恋に落ちるとか有り得ねぇと思った」



『…う…そ』



「告られた時、本当に俺の事好きなのかなって…

憧れと履き違えてるんじゃねぇのかって戸惑った


でも、本音を言えばすっげぇ嬉しかったし!!」



『だって…お姉ちゃんばかり見てた』



「さっきから舞歌に拘ってっけど

一度もそんな風に見た事ねぇし

舞歌の事見つめてた事ねぇよ」



『…嘘つき』


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