秘密の花園
あずなさんはふっと表情を緩めた。
「なんか安心しちゃったな」
「うへ?」
クククと押し殺した笑いがあずなさんの口から漏れていく。
「あの和馬くんに挑戦状叩きつけたっていうからさ~。てっきり気の強いワガママな女の子かと思ってたんだよねー。ほら、和馬くんって愛想が足りないんだけど、顔が整ってるもんだからねー。カットモデルのスカウトをナンパだって勘違いするバカ女がたっくさんいたのよ」
ふーん…顔ねえ…。
言われてみれば整っているような、いないような。
「その点、理香ちゃんは普通っぽいよね。どうやって和馬くんと知り合ったの?」
「えっと…それは…アハハハハハ!!」
まさか、あいつの腹に一発食らわせたのが縁だなんて。
口が裂けても言えない。
「おい、まだかよ」
サタンの急かす声が更衣室の外から聞こえる。
「はい、できたよ。頑張ってね~」
一歩足を踏み出すとあずなさんの手によって完璧に結わえられた靴がカツリと小さく音をたてた。