秘密の花園




「あの…水瀬さんは…?」


「どっかにいるんじゃねえの?頭動かすなよ」


動かすなと言われる時に限って、もぞもぞと動きたくなるのが人間の本性ってもんだ。


ハラハラと落ちていく自分の髪のせいで顔の側面がかゆい。


動きにくい合羽で無理矢理ポリポリと頬を掻くと、サタンの低い声が耳に響く。


「動くなって言っただろ」


「スイマセン」


サタンはそれきり髪を切ることに集中し始めたので、すっかり放置された私は暇を持て余してしまった。


鏡越しにお店の様子を窺うと、私以外にも何人か同じようにカットモデルをやる女の子がいて、今か今かと撮影の順番を待っているようだった。


ふあっと欠伸が洩れる。


眠い…。


ただ座ってるって結構退屈だ。


気を使っているのか雑誌が置いてあるけど、連日のオシャレッスンのせいで表紙を見るだけで身の毛がよだつ。


マイハニーを持参してくればよかった。


乙女ゲーは人目があって出来ないけど、普通のゲームはできたのに。


水瀬さんにこんな所でもゲームをやる中毒者だって思われたくなくて家に置いてきたのが裏目にでた。


ああ。


眠ったらダメだと思えば思うほど瞼が重くなっていく…。




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