秘密の花園





「大丈夫だよ。もっと肩の力抜いて」


カメラマンの人が緊張をほぐそうとしているのか二カッと白い歯を見せながら笑う。


そう言われましてもねえ…。


証明写真を撮るときのようにガッチガチの真面目顔になってしまうのは条件反射のようなものだ。


江戸時代の人達が写真に写ると魂を吸い取られると思った理由がよく分かる。


魂っていうか生気を吸い取られてるような気がする…。


「困ったねえ…」


カメラマンさんのそんな困ったような呟きが聞こえた時、たまたま通りがかった水瀬さんと目が合う。


水瀬さんは私に向かって小さく手を振ってくれた。


うひょーい!!


心の中で万歳三唱しながらこちらも手を振り返すと、水瀬さんは自分の顔を指差した。


なんだろう?


撮影のことなんか忘れて意識を集中する。


すると、突然、水瀬さんは手で顔を思いっきり潰して、タコのようなお顔におなりになったのだ。


「ぶっ!!」


「おっ!!そのまま!!」


カメラマンさんは一瞬のうちに、水瀬さんの変顔に吹き出している私の顔に向かって何度もシャッターを切ったのだった。






< 124 / 289 >

この作品をシェア

pagetop