秘密の花園



「そうだ。理香ちゃんに会いに来てた人がいたよ」


「私に?」


一旦、作業の手を止めて店長のほうを見る。


わざわざ私を名指しして会いに来るなんて奇特な人物がいるんだろうか。


そもそも存在感が薄くて、店員がいるってことすら気がつかれないこともあるのに。


「どんな人でしたか?」


「こんな感じに眉間に皺寄せてる背の高い男の人だったよ」


店長は露骨に眉間に皺を寄せて、悪役レスラーみたいないかつい顔をした。


私の頭の中である人物が思い浮かぶ。


「携帯繋がらないから、ひとに聞いて直接会いに来たんだって。心当たりない?」


もしかして…。サタン?


愛想の悪い男なら少なくとも水瀬さんじゃない。


一体なんのつもりだ。


「どうしたの?」


「なんでもないです」


強張った顔を誤魔化すように大きく首を振って、作業に戻った。


幸いにもレジスターを直している間、お客は一向にこなくて、修理に没頭することが出来た。



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