秘密の花園


「本当にバカだな、お前は」


サタンはぐずぐずと泣き出した私を背負ったまま、呆れるように言った。


「どうせ。バカだもん」


涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をサタンのシャツで拭う。後で怒られたって知るもんか。


「お前、目の前にいる男がどういう男だか知っているか?」


「……魔王?」


「お前が俺をどういう目で見ているかよーく分かった」


……こめかみをヒクヒクと痙攣させたサタンは、私を道路にわざと落っことしやがった。


「痛い!!何すんのよお!!」


ぶつけた尻をさすりながら、月明かりを背にして立っているサタンを睨む。






「美容のスペシャリストを相手に可愛くなりたいなんてほざいてんじゃねーよ」






私はポカーンと口を開けて、頭上の男を見上げた。


「あんなちんけな挑戦状なんてなくたって、可愛くしてやるよ」


サタンは口元に笑みを浮かべながら自信満々に言ってのけた。


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