秘密の花園
私は観客席から嵐子に視線を移した。
「約束、忘れてないでしょうね?」
「ええ、忘れてないわよ。あなたが嵐子に勝ったらブログの記事を訂正するわ」
勝ち誇ったようにふふんと鼻を鳴らされる。
……こいつ、始まる前だっていうのに勝った気でいやがる。
「それで、嵐子が勝ったらあなたは何をしてくれるの?」
嵐子はきゅるんと可愛らしい仕草で首を傾げた。小動物、たとえばハムスターのようなつぶらな瞳を想像してもらいたい。
うっかり心を鷲掴みにされそうになって、辛うじて堪える。
「何でもする。犯罪以外なら」
女に二言はない!!
「うふふ。嵐子の犬にでもしてあげるわ」
嵐子はさも楽しそうに己の髪の毛をくるくると弄んだ。
けっ、犬にでもなんでもしやがれってんだこんちくちょう!!
サタンの下僕である私にとって、嵐子の犬になることなど屁でもなかった。