秘密の花園

「それではミスキャンパス開催です!!」


実行委員長が長たらしい口上を述べた後に高らかに宣言すると、わーと歓声と拍手が観客席から沸き上がった。


ステージに一列に並ばされたエントリー者達も一緒に拍手を送る。


参加者は全部で10人だ。皆、胸には安全ピンで番号札が付けられている。


私の胸の上では“4”と書かれた札がゆらゆらと揺れていた。


……縁起が悪い。


縁起を担ごうなんて思っていなかったが、なんとなく気になるものである。


番号札の向きをちょいちょい直していると、後ろに立っていた実行委員がひっそりと耳打ちをしてくる。


「ほら、手を振ってあげてください」


周りを見れば、参加者たちは各々自由に観客に向かって手を振っていた。


うわ……。


ステージから見る人混みがあまりに凄くてえづきそうになる。


いけない、いけない。あれは人じゃない。野菜だ、野菜!!


かぼちゃ、だいこん、ごぼう。忘れちゃいけないキャベツもね★


私はありったけの野菜の名前を頭の中で並べ立てて、開会式をなんとか乗り切ったのだった。


< 244 / 289 >

この作品をシェア

pagetop