秘密の花園

マリサンカートの件だけではなく、焼きそばにがっついている変な女という尾ひれがついた。


けれど、今はそれどころではない。


焼きそばをもしゃもしゃと咀嚼しながらカップルに会釈をする。


……今は、色気より、オシャレより食い気である。


やだ、この焼きそばおいしー!!


出来立ての焼きそばの美味さに箸が止まらなくなる。


「お姉ちゃん……」


背後から呆れたような妹の声が聞こえたのはその時だった。


うわ、面倒なやつに見られた!!


びっくりして焼きそばを喉に詰まらせかけて、胸をどんどんと拳で叩く。


見かねた唯香が差し出したペットボトルのお茶を飲んで、ようやく一息つくと、私は慌てて尋ねた。


「唯香!?来てたの?」


「お姉ちゃん、立ち食いなんてやめてよ!!みっともないから!!」


「ごめんごめん。お腹が減りすぎて我慢出来なくて」


デヘっと誤魔化すように首を傾げれば、唯香の背後から可愛らしい女の子が2人登場した。


「初めまして、友人のさなえです」


「同じく、友人のれみでーす!!」


ふたりは私に簡単な自己紹介をしてくれた。


焼きそばの件には触れない。なんて良い子達だ。

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