秘密の花園




「ありがとうございました~」


デブが立ち読みを終えて店から出て行くと、店長とふたりきりになってしまった。


悲しいかな、本日の売り上げまだ2冊。

作った大量のブックカバーが消費されるのはいつのことやら。


「ひまだ…」


客がいないのをいいことに、ぐてっとレジ横に突っ伏する。


売れなきゃ補充も発注の必要もない。


週刊誌や月刊誌の類は既に陳列済み。


つまり何もすることがないのだ。


さすがにバイト中にゲームをやらないくらいの分別はある。


唯一の救いはエアコンが効いていて、ただ座っているだけでも快適だということだ。


炎天下の中、走り回っていた数時間前の出来事がもはや遥か昔に思えてくる。



< 44 / 289 >

この作品をシェア

pagetop