秘密の花園



行くぞと言われたけれど、一体どこに行くのだろう。


サタンは一度もこちらを振りかえることなく、今しがた辿ってきたばかりの通りを歩いていく。


私はサタンの後方2メートルの距離をつかず離れず保っている。悔しいことにコンパスの違いがあるので早歩きをしなければならず結構辛い。


そもそも練習するのに、店の外に出る必要があるのか。


なにぶん初めてのことなので私には勝手が分からず、戸惑うことばかりだ。


ほどなくしてサタンは通りの角にあったコーヒーショップに入っていった。


「これまたオサレな…」


思わずう~んと唸ってしまう。


私らがよく行くようなチェーン展開しているようなコーヒー屋ではない。


豆からこだわってます、みたいな本格的なコーヒーショップだ。


マスター、コーヒー。


そう言えばきっとダンディーな髭のおじ様がにっこり微笑んで受け答えしてくれるに違いない。


「早く入れよ」


サタンに呼ばれて尻込みしていた足がようやく動く。


通いなれているのか、サタンは淀みなく店の奥の席に腰を下ろした。


私もビクビクしながらテーブルにつく。



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