Hurly-Burly2【完】

下駄を急いで脱いで両手に切れた鼻緒がだらんと

なった下駄を持った。

そして、大きく振りかぶる。

まずは右足から眼鏡の男に向かってその下駄を

力強く投げたのだ。

見事に顔面に命中してぶっ倒れる男。

そして、それを見て一際驚く先ほどあたしに

石を投げられた男は二度見する。

「今度はあんたの番よ!!

それ行け、あたしの下駄君。」

そして更なる剛球で石を投げた男に

向かって下駄を投げつけた。

それは華麗な弧を描いて顔面にクリーンヒットした。

「鼻緒君、君の活躍のおかげであたしは

何とか逃げ切れそうである!!

最後まで、あたしのために頑張ってくれて

ありがとう!!」

少し悲しいお別れだったわ。

右腕で鼻を擦ってまた逃げることを再開した。

鼻水が出るのは涙の代わりである。

いつか、また君に出会えることを待っているわ。

君のような下駄に会えたことはきっと忘れないからね!!

裸足になったあたしは軽かった。

足が思ってるよりも速度出せて、

何だ下駄じゃなくても行けると

思ったのも束の間道には何が落ちているか

分からないものでその恐怖と戦いながら

とにかく必死に逃げた。

また、男たちに追われたらとんでもない。

次はないのである。

前も見ずに走っていた。

捕まるわけにはいかなかった。

足に何が刺さっても気付かないフリして、

痛くても我慢した。

走って走って逃げることに全力を捧げた。

だから、男たちがすごい形相で追ってきた

時はもう駄目かもしれないと弱音が吐き出そうで

どうしようってそれだけだったと思う。

もしも、こんな時にスーパーマンでも現れたら

あたしのピンチをどう助けてくれるんだろうと

さえ考え始めて居たんだ。

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