妖魔04~聖域~
俺の腕に顔をこすりつけながら、学園の校舎とは逆の方向に向おうとした燕に腕十字をかけて苦しめる。

長時間、技をかけていたのでグッタリしている。

「駄目だこいつ」

勘違いでしかない。

何かを考えているといっても、その場しのぎでしかない。

ろくでなしの燕を引きずりながら、校舎へと足を踏み入れた。

校舎一階。

誰も廊下を歩いていない。

誰にも見つからずに歩く事が可能だ。

しかし、肝心な情報が一つ抜けていた。

「秋野の奴、どこにいる?」

笹原妹から情報を聞き出すのを忘れていた。

「ここで一句。犬神は アホの申し子 悲しきや。どうだ?知的だと思うだろう?」

回復した飛鳥を逆エビ固めで腰を痛めさせ、再びダウンさせる。

「くそ、無駄な時間だ」

一つ一つ部屋を回っていくのは面倒だが、呆けているのは時間の無駄だ。

向こうから顔を見せてくれればいいのだがな。

辺りを見回していると、人間と顔を合わせた。

「面倒くせえニオイだな」

長めの黒髪、制服を着込んでいる女は生徒だ。

遅刻でもしたようだが、関係ない。

女の感情は出会った瞬間に赤に染まり、冷静を保つ振り子は完全に壊れている。

「お前、妖魔よね」

「答える義務はない」

「答えなくてもいいわ。お前の息が、空気中に吐き出される事を考えただけでも身の毛がよだつ」

「お前の息は地球を汚すから、あまり喋るな」

お互いの言葉が戦闘の合図になったようだ。

女が鞄をこちらに投げると、同時に動き始める。

燕の体重が軽いとはいえ、鎖に繋がれた状態だと不利だ。

燕を盾にとも思ったが、女の攻撃を受ければ回復する間もなく死んでしまうだろう。

冗談ではすまない怪我になる。
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