妖魔04~聖域~
ずっと見ていたいところだが、そうもいかない。

俺は吟よりも軽い十三ポンドを持ち上げて、構える。

「萌え萌えですわあああ!」

叫びながら投げると、即ガーターという結果になってしまった。

「うわあああん!」

両手、両膝をついて、悔し涙を流す。

何故、勝てない。

すでに吟はカーブまで習得しているし、初めてじゃないのかよ。

凄いと思うけど、自分が情けない。

「ビン立ちして反り返ったような玉の軌道を描かないといけないアルよ」

すでに、ボーリングの玉を持った吟が隣に立っていた。

「まだ昼間なんですけど」

何の恥ずかしげもなく言うのが吟なんだけどな。

でも、何でだろう。

とても楽しいんだ。

「吟、俺って、ここで楽しんでていいのかな」

「楽しみはいつも傍にアル」

物事を楽観視しているようだが、本当は深く考えてるんだろう。

「ふう」

席に座って、俯き加減で思いに耽る。

こうしている間にも敵は進んでいる。

本当に、いいのか。

上を見上げると、玉がこちらに落ちてきている。

「ダイブ!」

必死になって避けると、玉は地面にめり込んだ。

「すいませーん」

投げてきたのは吟ではなく、隣のレーンの人だった。
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