妖魔04~聖域~
「全てがいい方向に動いているわけじゃない」

メリットもあれば、デメリットもあるのは当然の摂理というわけだ。

「彼女が風邪を引かないように、早く始めようか」

『王子様、ワタシの居場所はないの?』

寂しそうな声で、離れたくない事を訴えてくる。

「全ての行動を他人に委ねると駄目になる。自分で見て、聞いて、決めて、生きていくんだ。どんな形になろうとも生きている限りは責任を持って行動しなくちゃならない。それが生き物の課せられた使命だ」

彼女は、体に入る事を恐れているのかもしれない。

『愛別離苦の渦の中』

「人は見えないモノもなくちゃならない」

ロベリアには目の前に横たわる肉体が妹だという事に気付いていない。

「しかし、どうすればいいんだ?」

「取り出そうという意識を起こせば、コアは体内から出て来る」

入ってきた時とは逆に押し出すイメージを作ると、体内を通って手からコアが出て行く。

着用していたアーマーの感覚はなくなり、直に風などを感じる。

「契約を完了すれば、コアを体内に入れるかどうか選択が出来る」

手元にあるのはロベリアの意識が篭っているコア。

「普通のコアと違って、契約妖魔のコアは外の空気に弱い」

「だから、環境に合わせた試験管の中に入っていたということか」

数秒で死に絶えはしないだろうが、早く入れてやったほうがいいな。

魂を自由に行き来する禁忌、目の前の光景が現実かどうかが疑わしい。

そう、契約妖魔になるという事は、不老である事を意味する。

最初、妖魔とは便利な力を使える者でしかないと思っていた。

だが、次々と現れる事実と人物達によって、世界の理を壊した存在だということを認識せざるを得なくなった。
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