妖魔04~聖域~
ロベリアの妹の傍で、コアを胸部へと置く。

コアが体内へ埋もれて行きと、静寂が訪れる。

それは刹那か永遠か。

彼女の瞳が開いた時、喜びとも戸惑いとも取れない感情が沸き起こる。

彼女の意識を転移出来たことの喜び、起こってはならぬ事実による戸惑い。

契約妖魔の技術を悪用する者が現れれば、世界は崩れる事になる。

「青く開かれた美しき世界」

頭の中に響いてきた声とは若干違うが、発言はロベリアの物であた。

「久々だと思うけど、やっぱり、人の目を通してみたのと、自分の目で見たのは違うだろ」

「これがワタシの生きる世界」

結果としては良かったのか。

原点であるロベリアが体を失った経緯を聞かなければならない。

本人は記憶を失っており、真実を知る者は一人しかいない。

「ライン、一段落ついたところで、聞かせてもらおう」

「君の知りたい答えを与えよう」

「嘘は言うなよ」

「歴史を捏造しないところを誓おうじゃないか」

ロベリアの過去の紐を解ける鍵を持っているのはラインだけだ。

「彼女にとってはどちらが幸せなのだろうねえ」

「話を聞かない限り、わからんことだ」

俺は彼女を見る。

世界に浸っている彼女の目は、自分と同じく翡翠のような色をしており、どこか遠くを見つめていた。

それは妹のコアの在り処か、世界の行く末か。

今の俺にはわからなかった。
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