愛とは何ぞや…
私は更に記憶の糸をたぐりよせながらまたあの幼き私へと思いを走らせるた…。泣きつかれ眠い目をこすりながら、幼き私は母のタンスから引っぱり出してきた母の匂いのついた服を大事に胸に抱えて、それを母と思いながら眠りへと入っていく毎日だった。兄も寄り添って眠った。幼き兄妹は寂しさを共有していた。小さな体で長く冷たい夜と戦っていた。私達は本当に寂しかった…。お母さんが恋しかった。
ある冬の夜、かなり冷え込みが辛かった。手足を丸めうずくまる私に兄は「寒いね寒いね」と言いながら電気ストーブのスイッチを入れた。しかし小さな私達しかいない部屋は広くなかなか暖まらなかった。知恵を絞った兄がマッチ棒を持ち出しストーブの前で火をつけ、ストーブの前面を一部焦がしてしまった。母親が帰ってきてそれに気づいた。兄は容赦なくホウキの杖で叩かれた。寒がっていた私のために兄が目の前で殴られた。私はただ恐かった。幼き私は小さな体を更に縮めて、母の怒りがおさまるのをひたすら待った…。
母は疲れていた。
幼子2人を抱えて働く場所は夜のスナックの掃除婦だった。その頃の記憶といえば、明るい時間帯の母は横になって寝てばかりいたような記憶しかなかった。
日々成長盛りの私達兄妹を躾る人は誰もいるはずはなかった。
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